
宇宙の距離はどうやって測るの? ―「宇宙の距離はしご」のはなし【標準宇宙論①】
夜空を見上げると、星がたくさん輝いていますよね。でも、あの星がどのくらい遠いのか、どうやって知るのでしょう? メジャーを宇宙に伸ばすわけにはいきません。
実は、宇宙の距離を測るにはいくつもの方法を「はしご」のようにつなぐんです。近いところから順番に、少しずつ遠くへ。これを天文学者たちは**「宇宙の距離はしご」**と呼んでいます。
第1段:お隣さんまでの距離 ―三角測量
まず一番近い星まで。使う道具は「三角形」です。
学校で習う三角形の性質を思い出してください。底辺の長さと、両端の角度がわかれば、三角形の形が決まります。頂点までの距離も計算できますよね。
宇宙版ではこうします。地球は太陽のまわりを1年かけて回っています。1月の地球の位置と7月の地球の位置は、約3億キロメートル離れています。この「底辺」を使って、近くの星を三角形の頂点として見ると、微妙に方向がずれて見えます。このズレを**視差(しさ)**といいます。
ズレが大きいほど近い星、小さいほど遠い星。こうして数百光年以内の星なら距離が測れるんです。
📝 NOTE**光年(こうねん)**とは、光が1年間に進む距離のこと。約9兆4600億キロメートルです。数字が大きすぎて想像できませんね。でも、それくらい宇宙は広いんです。
第2段:もっと遠い星へ ―セファイド変光星という「標準ロウソク」
三角測量で測れるのは、宇宙全体から見ればご近所さんの距離だけです。もっと遠くには別の方法が必要になります。
ここで登場するのがセファイド変光星(変光星=明るさが規則正しく変わる星)です。
この星には不思議な性質があります。明るさが変わる周期(テンポ)と、本当の明るさが比例しているんです。つまり、点滅のテンポを測るだけで、その星が「本当はどのくらい明るいか」がわかります。
あとは簡単です。「本当の明るさ」と「地球から見た明るさ」を比べれば、どのくらい遠いかが計算できます。遠くにある電球ほど暗く見えますよね、それと同じ原理です。
この性質を発見したのは、ヘンリエッタ・リービットというアメリカの女性天文学者。1908年のことでした。この発見で、数千万光年先の銀河まで距離が測れるようになったんです。
第3段:宇宙の果てへ ―Ia型超新星という「宇宙の閃光」
さらに遠くへ行くには、もっと明るい「標準ロウソク」が必要です。
それが**Ia型超新星(いちえーがた ちょうしんせい)**です。
超新星とは、星が一生の終わりに大爆発を起こす現象です。このIa型という種類の爆発は、どこで起きてもほぼ同じ明るさになるという特別な性質があります。なんと、銀河ひとつ分の明るさに匹敵するほど輝きます。
これが宇宙で「光っている」のが観測できれば、セファイドと同じ原理で距離がわかります。この方法で数十億光年以上先の距離も測れるんです。
実はこの超新星の観測から、1990年代に「宇宙の膨張が加速している」という大発見が生まれました。これが標準宇宙論の重要な柱のひとつになっています。
まとめ:はしごを登るように、遠くへ
| 方法 | 測れる距離のめやす |
|---|---|
| 三角測量(視差) | 〜数百光年 |
| セファイド変光星 | 〜数千万光年 |
| Ia型超新星 | 〜数十億光年以上 |
近いところから遠いところへ、方法を乗り換えながら距離を測っていく。これが「宇宙の距離はしご」です。
ひとつひとつの段は地道な観測の積み重ね。それが宇宙の地図をつくる、天文学者たちの仕事なんですよ。
次回: 距離が測れるようになったことで、宇宙が「膨らんでいる」ことがわかりました。では、宇宙はいつから膨らみ始めたのでしょう? 次はビッグバンのはなしをしましょう。
📚 シリーズ:標準宇宙論
- 1宇宙の距離はどうやって測るの? ―「宇宙の距離はしご」のはなし【標準宇宙論①】
- 2宇宙のメトロノーム、セファイド変光星【標準宇宙論②】
- 3宇宙は膨らんでいる——ハッブルの法則と「中心のない宇宙」【標準宇宙論③】
- 4すべては138億年前の一瞬から——ビッグバンとは何か【標準宇宙論④】
- 5宇宙の27%を占める「見えない物質」——暗黒物質とは何か【標準宇宙論⑤】
- 6光より速く膨らむ宇宙——暗黒エネルギーの謎【標準宇宙論⑥】
- ⋯ 続きの記事もあります